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当ブログは株式会社トミーウォーカー様が運営されるPBW,「TW4:サイキックハーツ」PCのサイドストーリーや、不定期日記などを掲載しています。知らない方は回れ右でお願いします。 なお、掲載されるイラストの使用権はプレイヤーに、著作権は作成したイラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカー様が所有します。無断使用はお断りさせていただきます。
HOMESSの記事
[2024/05/19] [PR] (No.)
[2015/08/01]    「灯」の存在:独章 (No.8)
[2015/07/25] 「灯」の存在:白嵐乃章 (No.6)
[2015/07/23]   「灯」の存在:うら章 (No.5)
[2015/07/21] 「灯」という存在:序章 (No.3)
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『ふふ、そっかぁ。』

『だいじょーぶだよ、よーひちゃん。
なんにも、なーんにも特別な事はする必要、ないの。』
『一緒にお出かけして、同じ目の高さで同じものをみて、綺麗だねって言って。
一緒に、おいしいものを食べて、おいしいね、って言って、笑いあうの。
手をつないでね、隣同士の手のあったかさを感じて、同じ時間を過ごすの。』



『 ――――― ただ、それだけ。 ―――――― 』



やっぱり、誰よりも先に陽桜ネに相談に来た。
あたしにとって、一番身近で信頼している女の子。
いつもあたしの方が”お姉さんみたい”とみんなに言われるけれど、
あたしにとっては紛れもない、”姉”。
どきどきしながらその幼馴染の言葉を待っていた。
実を言うと、自分がこれ程”恋愛”に耐性がなかった事に不安があった。

勇介の言葉を思い出しては熱くなって何も手に付かず、
勇介の顔を思い出しては一人でオロオロしてしまう。

まるで”自分が自分でない”様な感覚。
だから、あたしは自分を落ち着けれる場所を求めていた。
「そ、そんな事でいいのね?
今まで通り、とほぼ同じなのね?」

陽桜ネが言ってくれたアドバイスは、あたしには意外で、
でも、期待通りあたしを落ち着けてくれた。
やっぱり陽桜ネは頼りになる。
それでもちょっと不安はあるから、念押しした。
きっと陽桜ネは、笑って背中を押してくれると信じてるから。

だから、いつものあの笑顔を見たくて俯いていた顔を上げると――――


”そこには自分の知らない陽桜ネの微笑みがあって内心戸惑った。”


ふわりと優しげで、嬉しそうで、懐かしそうで、
そして、
寂しそうな、どこか遠くを見ているような、そんな笑顔で、
いつも通り、今まで通りに、肯定するように頷く陽桜ネ。

あたしの知らない陽桜ネが、この舞台に姿を現したのだった。

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異変はいつも突然に起こる。
バベルの鎖に覆われている身でも、感知できないことは山ほどある。
人生の節目節目で、それは何度も感じ、何度も乗り越えてきた。
そして、今日この瞬間に、また一つ異変が起こる。
予想していた未来ではあるが、起こってみると感慨深くもある。
そんな、親として喜ばしくもあり、恐ろしくもある、そんな日が来たのだ。

「ありがとうございました。」
最後の客を見送り、看板の灯を落とす。
店内の片付けと仕込みを終わらせ、先に上がって待ってる家族の元へ向かう。
店の裏口から庭に出て空を見上げる。
月は傾きかけ、星は瞬いて強く主張する。
そして一つ、赤く灯るランタン。
何かの予感が体を駆け抜けた。

家に戻れば団欒が待っている。
職も家族も手に入れたのだ。
戦いに明け暮れた日々を駆け抜け、必死で守り通した。
その報酬として、ささやかな幸福がこの手にはある。
もちろん、戦いは終わっていない。
主戦場が変わっただけだ。
自分で戦うより、遥かに困難で重大な戦いの、最中なのだ。

その一つが、目を覚ましたようだ。
始まりは1本のメール。「不穏な気配がするよ」
離れて暮らす息子からのメール。
何分、自分も感じているのだ。
半身の事ともなれば、息子の方が敏感だろう。
いよいよ来たか、と思う。

自宅のリビングには、地下室に通じる階段がある。
そこは、かつて使っていた殲滅道具たちが眠っている。
自分が使っていたもの、仲間が使っていたもの、
そして、あるダークネスから取り上げて封印したもの。

埃っぽい階段を降り、明かりをつける。
部屋の奥、長物が納めてある一角を見る。
そこには厳重に封印が施されている160cmはある細長い箱がある。
それに近寄って、そっと蓋を開け中を確認する。
華美で儀礼的な柄、蝋燭立てを思わせる口金、細く鋭い燃える灯の様な眩い刀身。
そして目を引くのが、口金から石突に掛けて張り巡らされた「暗幕」の存在。
その『槍』は、誰かを待っている様に明滅し震え始める。
中身を確認して再び蓋を閉め、独り言ちる。
「目覚めつつある、か。これを取りに来るのは、”帳”なのか、もしくは――――。」

箱を担いで地下室を出る。
そのまま庭に出て星空を眺める。
”帳”の復活は、あの時から想定していた。
”帳”をあのように封印した、その時から。
それは、長年を灼滅者として戦ってきた故の親心でもある。

「受け入れるべきを受け入れて、超えるべきを超えてくれ。曜灯」

”白嵐”と呼ばれたダンピール、御津乃廉・灯の夜空への独白は、
寄り添ってくれる彼のパートナーと星々のみが聞いていた。







「ただいま」

学園祭2日目。
シューズアートをしているクラブで作って来たブーツを見る。
一緒に作った、ショートブーツ。
勇介もショートブーツを作ってたから、お揃いと言っていいと思ってる。
あたしから言い出したとはいえ、勇介が考えて見つけてくれた企画だった事、
それがブーツコレクターなあたしにぴったりだった事、
このブーツ履いて出掛けようって誘ってくれた事がすごく嬉しかった。
勇介とのデートまで大事に仕舞っておこうと決めて、丁寧に鞄に入れた。

同じように靴を仕舞っていた勇介が声を掛けてくる。
勇「曜灯、付き合ってくれてありがとっ!」
他愛もない会話が始まる。
あたしはその時には、そう思っていた。

曜「ううん。誘ってもらったのはあたしの方。ありがとうね。」
(ちょっと強引にねだってみたのはあたしだから。
だから、お礼はあたしが言うのがただしいでしょう、ね、勇介?)

勇「いつも学園祭の頃はバタバタしちゃうから、
友達と遊びにいったのは初めてなんだ。だから嬉しかったよ。」

曜「そう。それは良かったわ。」
(そう言えば、忙しそうにしてたっけ。
忙しいのに、あたしの我儘を聞いてくれてありがとう。
でも一つだけ、勇介は間違ってるわよ。
答えは教えてあげないけど。)
曜「でも、もうちょっと大きく出てくれても良かったのよ?」

顔を軽く背けて横目で勇介を見る。
身長差がかなりあるから、見上げる形に、上目遣いに自然となる。
勇「えっ?」

曜「女の子を誘ったんだから、そう言ってくれたらいいのよ?」
(なんだか勇介の反応がおかしいわね。
てっきりキョトンとして頓珍漢を言ってくると思ったのに。)

勇「え、えと。今日はデート、付き合ってくれてありがとなっ!」

曜「どういたしまして。また誘ってくれるんでしょう?」
(あ、気付いてくれたのね。
それに、うろたえるのじゃなくて、きちんと言ってくれたわね。
もう、緊張しちゃって、可愛いわね。
でも、頼もしいじゃない。
それなら、また我儘言っていいわよね?)

パーッと、ニッコリと、勇介が喜ぶ。
勇「うん、また誘わせてくれよっ。」

曜「期待してるわよ?あとは…、他には何かないかしら?」
(次はどこに誘ってくれるのかしら?
それは今後の楽しみにしといて、
もう一つ、あたしには聞いておきたい事があるの。
今日は学園祭よ?コンテストがあったのよ?
あたしも参加してるんだから、何かあるでしょう?)

ちょっと考えて、勇介は学園祭パンフレットをめくって見せる。
勇「んと、あと30分ぐらいが限界だけど……屋台のくじ引きぐらいなら大丈夫かな?」

曜「いや、勇介のリミットが近いのは分かってるから、無理しなくていいわ。
探してくれてありがとう。」
(あ、早速誘ってくれるんだ。
厚意は嬉しいんだけど……。
ちょっと聞き方がまずかったかしら?)

居住まいを正して真っ直ぐ勇介を見る。
曜「でもね、ちょっと違うの。」
(ダメかしら?中々上手く出来たコーディネートだったんだけど…。
うーん、もう少し育ってくれないと印象薄いのかしら?)

思わず勇介を見上げる目に力が入る。
勇介は勇介で、すごく迷っている様に見える。
昨日今日と学園祭だったのだ。
店番、宣伝、コンテスト、投票、色々あるのは分かる。
でも、あたしに言うべき事って言ったら、店番とコンテスト位だと思うのだけど?
それにしても、すごい冷や汗をかいている。
蹴るとか踏むとか、ちょっと脅かしすぎたかしら?
と首を傾げながら自己反省する。

少しして、勇介が突然表情を引き締めた。
取り敢えず何か言う気になったようだ。
端から見ても力が入っているのが分かるし、喉までならしている。
そんなに踏まれるのは怖いのだろうか。
後で謝っておこうと決めた時、
勇「え、えと、友達から……はもう始まってるから、その、付き合って下さいっ!」
頭を下げられた。

曜「え?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
(ん?今あたし、なんて言われたっけ?
”友だちから”って、何を今さらな事を。
”始まってるから”って、うん、1年くらい友だちやってるわよね。
”付き合って下さい”って、それはデートとか誘ってくれたら付き合うわよ?
ん?さっき普通に誘ってくれてたわよね?
じゃ、この付き合ってっていうのは、何を?
なに、今まで見た事ないような真剣な顔して。汗まで浮かべて。
それって、もしかして、勇介はあたしに告白し…………。)

顔が熱くなり始める。頭の上でボンっと何かが弾けた様な気もする。
目が泳いで勇介を直視出来ない。
内心が口に漏れ出してくる。
曜「え?その…、だって……、あたしは、…、水着の事を、…アレ?」
(こ、このタイミングで!?前触れなんて……、あった様な気がするけど…。
ほ、ほんきなのかしら?だって、そんな…。ひ、ひぃ!(弟の事)陽桜ネ!
パパ、ママ!あたしはどうしたら…。
ダメ、頭が上手く働かないわ。
空気、空気が欲しい!)

すぅー、ふーーーーー。
ゆっくり吸ってゆっくり吐く。酸素を体中に行き届かせる。
すぅーっ、ふーーー。
速く吸い込んで止めて、一息で吐き出す。
うん、ちょっと頭が冷えてきた。

ゆらりと顔を伏せて名前を呼ぶ。
曜「勇介。」
(あたしは、どうなの?告白されてどう思ったの?
聞きたい。もう一度、聞きたい。
そうすれば、分かると思うから。)

声が震えそうだった。顔を背けそうだった。
でも、真っ直ぐ伝えないと。しっかり向き合わないと。
曜「それ…、本気なのかしら?」
(我ながら冷めた言い方ね。
表情も、きっと怖い顔してるわよね。
ごめんね、でも虚勢張らないと顔を見ながら話ができないの。)

たじろいでうろたえる、いつもの勇介が目の前にいた。
それを見ると、不思議と落ち着いてきた。
勇「いや、さすがに本気じゃなかったら言えないでしょ!?
っていうかそっちにその気が無いとかだったら、マジごめんっ!」

冷静になってくると、勇介の態度に腹が立ってくる。
自分の周りの温度が下がっていく気がした。
曜「あたしの事はいいの。勇介が本気なら、もっと、強い言葉で言って。」
(何その日和見な言い方!勇介の本気ってその程度なの?
あたしがその気がなかったら引っ込める程度のものなの?
どっちよ!)

あたしは相当怖い顔をしてたんだと思う。
勇介は押されたように仰け反って、
でも、またあの時の様に表情を引き締めて、
あたしを真っ直ぐ見て、
勇「なら、言うよ。好きだ。付き合ってくれ。」


(うん、ありがとう。あたし、嬉しかったんだわ。)
(勇介に告白されて、嬉しかったの。)
(実を言うとね、勇介が本気なのは分かってたの。)
(あたしがその本気を受け止める為に、必要だったの。)
(正直、あたしには”恋”って良く分からないの。そういう好きって事がね。)
(でもね、勇介なら、勇介だから、嬉しかったの。)
(あたしでいいんだよね?なら、よろしくね。)


曜「うん、よろしくね。」

勇介に近づいて胸の辺りの服を摘まんで俯く。
ダメ、こんな顔を見せられないもの。
顔を真っ直ぐ見れないもの。
でも、あなたの近くにはいるよ?

それで許してね、勇介。









 世界も、人も、変わっていく。
「札幌迷宮戦争」から始まり、学園祭が終わり、自分の周りは大きく変化している。

 もちろん、自分自身も。

 人同士が築く関係には優劣がある事を知った。
 親しい相手にも自分が知らない面がある事を知った。
 「戦い」に対する自分の価値観の変化を知った。
 守るものへの基準がある事を知った。
 近しい人ほど自分に対する感情を読めない事を知った。

 何よりも

 自分自身の事をほとんど知らない事を知った。

 自分が知らない自分自身、それは、宿している「闇」の事。
そして、自分の暗黒面について、何一つ考えたことがなかった。

 こんな事を考え始めたのは、きっかけがあったから。
自分で驚いた、自分の姿。自分は強いと思っていた。それが、あの変わりようだ。
自分は本当に自分なのか?どれが自分なのか?答えの出ない問いが繰り返される。

「あたしは、だれ、なのかしら?」

ここから始めよう。自分を知る旅を。果ての見えない道のりを進むのだ。

――――――――― 良い旅を ーーーーーーーーー


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