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――8月某日・自宅にて――
駆け戻って泣きはらしながら考えている。
自分をバラバラに切り刻む。
痛くて苦しくて救いようがなくて。
そして、
誰も助けてはくれない。
認めてしまった。
”あの日”からずっと信じて走り続けてきた事が間違いであることを。
あの人を助けたくて、”妹”に甘んじててはいけないと思って、
あの人の新しい居場所に、新しい”あたし”でなろうと、
そうして、
”おひさま”になろうとした。
蓋を開けると、あたしにはそんなことはできないのだと、
一番助けたかったあの人が無言で教えてくれた。
終いには、いつも寄り添ってくれる大好きな彼にさえ、
間違いだと指摘された。
あの人の為に、駆け付けられる、話を出来る、受け止めようと出来る、
そんな彼に嫉妬を持っていたのは確かだけど、
遂にあたしは耐えられなくなって、
大好きな彼に酷い事を言って、逃げ出してきた。
もうあたしには、何もない。
大事な人は一人、また一人いなくなった。
自分を支える信念は、折れてしまった。
もう、ここから消えたかった…………。
泣きながらベッドに突っ伏したまま、意識が深く沈んでいく。
真っ暗闇に溶けて、あたし自身さえも見えなくなる。
『貴女はまだ、全部をなくしたわけじゃないのよ?』
闇の中から、声が聞こえた。
「あなたは誰?どこにいるの?」
ほんの少し先さえ見えない暗闇の中、あたしは声の主に問いかける。
『ここは貴女の世界よ。そして、わたしはすぐ近くにいるわ。昔から、ね。」
落ち着いた女性の声は、確かに近くから聞こえる。
手を伸ばしたら触れられるかと思ってやってみるけど、手ごたえはない。
「ねぇ、なんで見えないの?目がいつまでも慣れないわ…。」
『それはね、貴女が”自分”を認識してないからよ。
貴女と、貴女以外の境界線がないから、ここは何もない場所なの。』
聞かされて、何故か納得する。
先程、自分自身が粉々に砕け散ったのだから、今”曜灯”という存在は無いのと同じなんだろう。
清々しいまでに真っ暗で何もなくて、先程までの悲しみもなくて心地いい世界だと思った。
『どうして貴女は、”自分の世界”を無くしてしまったの?』
折角楽になれたのに、その声は無粋にも心をかき乱してくる。
まだ心があるのかは知らないけど。
『喋りたくないならいいの。実はね、何があったのかは知ってるもの。』
そう前置きしてから声は続ける。
『貴女はずっと、”失う”、”認められない”、そういう人生だったものね。
そして、初めて手に入れた”自分”が否定されて、貴女は投げ出したのね。』
無遠慮にあたしの心理状態を講釈するのが頭にくる。
「そうよ!あたしにはもう、何も残ってないの。お願いだから休ませて。」
声はあたしの怒声を無視して話を続ける。
あたしにいちいち染み込んでくる言葉を選んで。
あたしの心理講釈が終わったあたりで、ふと質問を受ける。
『さて、貴女は本当に何も残ってないの?』
口調は変わらないのに、切れ味が増したように感じた。
声は続ける。
『長い人生、何かを失うのは避けられない事よ。
でもね、決してなくならないものもあって、
持ってるものの全てが一度になくなるなんてこともないのよ。』
胸のあるであろう辺りが、じわりと熱くなった。
『貴女は”夢”を持ったはずよ。
そしてそれは、信念を砕かれた今でも、失われることはないの。
貴女の口から教えて。貴女の夢はなに?』
間違っていたのかもしれないけど、走り続けた景色から見えたものがある。
力を付ける毎に思った事がある。
「ヒトと、ダークネスと、灼滅者が平等な世界を。
滅ぼし、滅ぼされる事の無い世界を。
分かりあえる相手と、分かりあって生きていける世界を。」
”調和”みたいな不自然な形じゃなく、住み分けや協調、不干渉から成り立つ、
人闇共存の世界。
「でも、大事な人一人、手が届かないあたしに出来るわけ……。」
『貴女一人では無理でも、同じ理想を持つ者は必ず現れるわ。
ほら、周りを見て御覧なさい。』
弱気になるあたしに、声は暗闇を見ろという。
恐る恐る周囲を見渡すと、そこには”人闇共存”の世界が鮮やかに現れていた。
『これが、貴女の理想。貴女がまだ持っている、”玉城曜灯”の姿よ。』
そうだ、目標を達成することはできなかったが、まだ、
走った結果出来上がった自分の理想は残っている。
この”自分だけの”理想の為に、もう一度信念を貫こうとする力が湧いてくる。
例え間違っていても、いや、正しい事なんて本当は無いのかもしれないけど、
自分の中に残り、作り上げたものの為に何度でも立ち上がる。
『ほら、手を見て御覧なさい。まだ貴女はそこにいるじゃない。』
目の前には自分の白い両手が見える。
あたしは、あたしとしてまだこの場に居る。
『ようやく、貴女と顔を合わせられるわ。』
舞台幕の様な影が開き、中からドレスを着た女性が現れる。
手には黄金の燭台を模した槍を持ち、上品な雰囲気と立ち振る舞い。
あたしによく似た顔の、その相手と対面する。
『御機嫌よう、わたしは”帳”の貴婦人。貴女に巣食うダークネス。
貴女の力の源。
そして、貴女と同じ理想を持つ者の一人。』
懐かしい感じがする。
それ以上に、親近感がある。
相手の心の中さえ、何故か手に取る様に分かる。
「ねぇ、名前は、ないの?もう一人のあたし。」
『そうね、貴女を祝福し、愛おしむ者、
”スレイ・ベガ”なんてどうかしら?
よろしくね、わたしの”愛し仔”。』
どちらからともなく、手を重ねようと腕を上げる。
指先が触れ合う瞬間に、理想の世界は眩く輝き、
あたしは目を覚ました。
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