忍者ブログ
当ブログは株式会社トミーウォーカー様が運営されるPBW,「TW4:サイキックハーツ」PCのサイドストーリーや、不定期日記などを掲載しています。知らない方は回れ右でお願いします。 なお、掲載されるイラストの使用権はプレイヤーに、著作権は作成したイラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカー様が所有します。無断使用はお断りさせていただきます。
HOME[PR]設定       『帳』の向こう側:灯と闇の邂逅
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。






――8月某日・自宅にて――

駆け戻って泣きはらしながら考えている。
自分をバラバラに切り刻む。
痛くて苦しくて救いようがなくて。

そして、

誰も助けてはくれない。


認めてしまった。
”あの日”からずっと信じて走り続けてきた事が間違いであることを。
あの人を助けたくて、”妹”に甘んじててはいけないと思って、
あの人の新しい居場所に、新しい”あたし”でなろうと、
そうして、
”おひさま”になろうとした。

蓋を開けると、あたしにはそんなことはできないのだと、
一番助けたかったあの人が無言で教えてくれた。

終いには、いつも寄り添ってくれる大好きな彼にさえ、
間違いだと指摘された。

あの人の為に、駆け付けられる、話を出来る、受け止めようと出来る、
そんな彼に嫉妬を持っていたのは確かだけど、
遂にあたしは耐えられなくなって、
大好きな彼に酷い事を言って、逃げ出してきた。

もうあたしには、何もない。
大事な人は一人、また一人いなくなった。
自分を支える信念は、折れてしまった。
もう、ここから消えたかった…………。

泣きながらベッドに突っ伏したまま、意識が深く沈んでいく。
真っ暗闇に溶けて、あたし自身さえも見えなくなる。

『貴女はまだ、全部をなくしたわけじゃないのよ?』
闇の中から、声が聞こえた。





「あなたは誰?どこにいるの?」

ほんの少し先さえ見えない暗闇の中、あたしは声の主に問いかける。

『ここは貴女の世界よ。そして、わたしはすぐ近くにいるわ。昔から、ね。」

落ち着いた女性の声は、確かに近くから聞こえる。
手を伸ばしたら触れられるかと思ってやってみるけど、手ごたえはない。

「ねぇ、なんで見えないの?目がいつまでも慣れないわ…。」
『それはね、貴女が”自分”を認識してないからよ。
 貴女と、貴女以外の境界線がないから、ここは何もない場所なの。』

聞かされて、何故か納得する。
先程、自分自身が粉々に砕け散ったのだから、今”曜灯”という存在は無いのと同じなんだろう。
清々しいまでに真っ暗で何もなくて、先程までの悲しみもなくて心地いい世界だと思った。

『どうして貴女は、”自分の世界”を無くしてしまったの?』

折角楽になれたのに、その声は無粋にも心をかき乱してくる。
まだ心があるのかは知らないけど。

『喋りたくないならいいの。実はね、何があったのかは知ってるもの。』

そう前置きしてから声は続ける。

『貴女はずっと、”失う”、”認められない”、そういう人生だったものね。
 そして、初めて手に入れた”自分”が否定されて、貴女は投げ出したのね。』

無遠慮にあたしの心理状態を講釈するのが頭にくる。

「そうよ!あたしにはもう、何も残ってないの。お願いだから休ませて。」

声はあたしの怒声を無視して話を続ける。
あたしにいちいち染み込んでくる言葉を選んで。
あたしの心理講釈が終わったあたりで、ふと質問を受ける。

『さて、貴女は本当に何も残ってないの?』

口調は変わらないのに、切れ味が増したように感じた。
声は続ける。

『長い人生、何かを失うのは避けられない事よ。
 でもね、決してなくならないものもあって、
 持ってるものの全てが一度になくなるなんてこともないのよ。』

胸のあるであろう辺りが、じわりと熱くなった。

『貴女は”夢”を持ったはずよ。
 そしてそれは、信念を砕かれた今でも、失われることはないの。
 貴女の口から教えて。貴女の夢はなに?』

間違っていたのかもしれないけど、走り続けた景色から見えたものがある。
力を付ける毎に思った事がある。

「ヒトと、ダークネスと、灼滅者が平等な世界を。
 滅ぼし、滅ぼされる事の無い世界を。
 分かりあえる相手と、分かりあって生きていける世界を。」

”調和”みたいな不自然な形じゃなく、住み分けや協調、不干渉から成り立つ、

人闇共存の世界。

「でも、大事な人一人、手が届かないあたしに出来るわけ……。」

『貴女一人では無理でも、同じ理想を持つ者は必ず現れるわ。
 ほら、周りを見て御覧なさい。』

弱気になるあたしに、声は暗闇を見ろという。
恐る恐る周囲を見渡すと、そこには”人闇共存”の世界が鮮やかに現れていた。

『これが、貴女の理想。貴女がまだ持っている、”玉城曜灯”の姿よ。』

そうだ、目標を達成することはできなかったが、まだ、
走った結果出来上がった自分の理想は残っている。
この”自分だけの”理想の為に、もう一度信念を貫こうとする力が湧いてくる。
例え間違っていても、いや、正しい事なんて本当は無いのかもしれないけど、
自分の中に残り、作り上げたものの為に何度でも立ち上がる。

『ほら、手を見て御覧なさい。まだ貴女はそこにいるじゃない。』

目の前には自分の白い両手が見える。
あたしは、あたしとしてまだこの場に居る。

『ようやく、貴女と顔を合わせられるわ。』

舞台幕の様な影が開き、中からドレスを着た女性が現れる。
手には黄金の燭台を模した槍を持ち、上品な雰囲気と立ち振る舞い。
あたしによく似た顔の、その相手と対面する。

『御機嫌よう、わたしは”帳”の貴婦人。貴女に巣食うダークネス。
 貴女の力の源。
 そして、貴女と同じ理想を持つ者の一人。』

懐かしい感じがする。
それ以上に、親近感がある。
相手の心の中さえ、何故か手に取る様に分かる。

「ねぇ、名前は、ないの?もう一人のあたし。」

『そうね、貴女を祝福し、愛おしむ者、
 ”スレイ・ベガ”なんてどうかしら?
 よろしくね、わたしの”愛し仔”。』

どちらからともなく、手を重ねようと腕を上げる。
指先が触れ合う瞬間に、理想の世界は眩く輝き、

あたしは目を覚ました。

PR
この記事にお返事する
お名前
お題
お色
お手紙
住所
お返事
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
宛先:管理人  
プロフィール
HN:
LJ
性別:
非公開
P R
Copyright(c)  紅小花のダイアリー  All Rights Reserved.
Material みるくきゃっと  Template かすぶろ  忍者ブログ [PR]