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当ブログは株式会社トミーウォーカー様が運営されるPBW,「TW4:サイキックハーツ」PCのサイドストーリーや、不定期日記などを掲載しています。知らない方は回れ右でお願いします。 なお、掲載されるイラストの使用権はプレイヤーに、著作権は作成したイラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカー様が所有します。無断使用はお断りさせていただきます。
HOME[PR]SS       白嵐の姉:君の手の温かさ
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 今日はやけに薄暗い日差しで、体が重くて動きづらかった。
すっかり馴染んだいつもより薄く見える庭に降りて歩く。
ここなら見つからないだろう――――――。


「「”――”みーつけたっ!」」
無邪気な声で私を呼ぶのは、双子の姪と甥。
弟の小さな宝物たち。
もちろん、それは私にとっても、だ。

「どうしていつもとちがうところにいるの?」
やや無表情だけど弟の奥さんに似た吸い込まれる様に輝く金色の瞳と、
弟の様なきめ細かい銀色の髪、――だったと思う――、を持った姪が訪ねる。

『今日はここに居たい気分だったのよ』

「こんなひかげはもったいないよ。こんなにいいおてんきなのに。」
こちらはにっこりとした表情の甥。
弟の色素の薄い灰目を受け継ぎ、義妹と同じ赤銅色の髪をしているはずの、
小さい頃の弟の面影の強い子が言う。

『そうなの、ちょっと日差しがきついのよ』

二人に手を貸してもらって、ゆっくりと色の褪せた美しい庭を家に向かう。
いつの間に、これ程広く感じる様になったのか。
手入れの行き届いた菜園、良い香りを放つハーブのプランター群
そよ風にそっと揺れる洗濯物。
姪と甥の砂場セットや三輪車。
見慣れたけど、褪せた色をした庭。
ゆっくり時間をかけて歩き、私のお気に入りの場所、
庭を一望できる縁側に着く。

いつも座っていたその場所に、”今日は”腰を下ろした―――。



「どうしたの?げんきないの?」
『ちょっと調子が悪くてね』

「なにかのむ?もってくるよ?」
『ありがとう。でも、喉は乾いてないよ』

「ねぇ、あそぼうよ。おはなししようよ。」
『そうだね、お話はしましょうか』

姉弟と他愛のない”会話”をする。
撫でる手の感触がとても心地いい。
そう言う所は、義妹似なのだと思う。
弟は武骨な所があるからだ。

幾分かそうやって過ごしたが、いよいよ疲れが出てくる。
心配した声で姪が言う。

「だいじょぶ?つかれちゃったの?」
『ごめんね、そろそろ休ませてほしいの』

「まってて、おとうさんよんでくるね」
『そう?おねがいね』

双子が立ち上がる気配がする。
立ち去って行く双子の背に向けて顔を向け、
輪郭がボケて見えにくくなった双子を見る。

『今までありがとうね、大好きよ』


――――――――

どれくらい時間がったのか、私は微睡んでいる。
音も匂いもどんどんと薄れてくる。
いよいよかな、と思った。
でも、もう立ち上がる力はなくなっている。
しかしよく考えれば、弟に見つからないなんてことはまず無理だと悟る。
手間を増やすだけなら、これでいいかもしれない。
このまま眠ってしまおう。

ふいに、体が浮く感覚が襲う。
そしてふわっとしたものに横たえられた感じがする。
背中をゆっくりと撫でる感触がある。

これは知っている。
武骨で大きくて優しい、そしてすごく温かい、私の大好きな手。
呼吸を確かめる様に、手伝う様に、ゆっくりと背をなぞる。
そこに弟がいる。
なのに、私の目はもう弟の顔を見る事が出来ないようだった。
残念だと思うけど、見えなくても弟の顔を覚えている。
ずっとずっと一緒だったのだから。

ふと、雫が跳ねる気配がした。

『泣いてるの?珍しいわね』
「逝くんだな。」

『あなたが泣く所なんて、何回目だったかしらね?』
「俺と一緒に居て、良かったと思うか?」

『世話の焼ける弟だったわよ』
「いつも戦い尽くめで、毎日傷だらけだったな。」

『危なっかしい所はあるけど、一緒に生き残ってきたじゃない』
「必死だったな、あの頃は。」

『今も危なっかしいんだから、気を付けなさい』
「大人になってからは、少しは楽になったか?」

『落ち着いたとは思うわよ?でもね、家族がいるんだから、無茶はだめよ』
「変わらないな、こんな時まで。いつもみたいに説教されてる気分だ。」

『姉の苦労がようやくわかった?』
「・・・・・・・・・・・・・・」

少しずつ声が聞こえなくなってくる。
撫でられる感触がなくなってくる。
最後に、弟と過ごせたことに感謝する。
一つ心残りがあるとするなら、やっぱり顔を最後に一目見たかった…。

「ありがとうな、一緒に居てくれて。
 お前のお蔭で、俺は人として幸せになれた。
 ありがとうな、

 ――― ”カカ” ―――。」

名前を呼ばれた気がして、最後の力を振り絞って片目をうっすら開けてみる。
暖かな明るい日差しを浴びて煌めく銀色の長髪。
すっかり少年っぽさの抜けた面長の顔。
相変わらず表情は薄くて。
灰色のツリ目の淵から涙を零している。
私の弟の見慣れた顔が、鮮明に映った。
温かな手の温度が、今は頭に感じられる。
その手が私に力をくれたようだった。

体は動かないけど、目を合わせて笑って見せる。

『最後の時に一緒に居てくれてありがとう
 私はあなたと一緒に生きて来て、幸せだったわ
 曜子ちゃんと子ども達を大事にしなさい
 それじゃ、お別れね

 ――― さようなら、”灯” ―――』

大事な弟に、旅立ちのお別れが言えた。
そんなささやかで幸せな一生だった。
心残りもない。
灯は、もう私が居なくても大丈夫。
私は地に還り、あなたたちを見守るからね。

そうして、私は、自身の満ち足りた生を閉じた。
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